繊維産業の現実とフェアトレード
自由経済は自由競争が基本ですからより良いものを、より安く市場に出せるかで勝ち負けが決まります。消費者は当然のこと良くて、安い物を求めます。
大量に作り大量に販売する。結果、莫大な利益を上げ更に資本を再投資して生産する。過剰に物が溢れ価格が下がる。デフレ経済が常態化してしまいました。町には100円ショップ、ディスカウントショップが隆盛を誇っています。どうしてこんなに安く売ることが出来るのでしょうか。疑問に思ったことはありませんか?
安く売るためにはコストを低くするしかありません。人件費、運営費が安い経済後進国の労働力を利用しています。現地の経営者は採算を合せなくてはならず、従業員への支払いを切り詰めます。労働環境も劣悪な場合が多い。それでも他に働く場がなければそのまま甘んじなければならないのが現実です。インド、アフリカの綿花農場は一般的に貧困地域です。更に貧困の度合いは進んでいます。
農場の有力者が農民に化学肥料、殺虫剤などの農薬を使って農業をするように指導します。
有力者は農薬の会社から何らかの金銭を受け取ることになります。農民は栽培を始めるとき、農薬を買う資金を持ちませんからまず借金の形でスタートします。収穫が終わると仲買人に作物を売り、借金分を差し引いたわずかな金額を受け取り、生活に充てます。農薬の害の為に働けなくなった夫を持った妻は子育てをしながら農作業を行うという悲劇的な状況になります。
一見のどかに見える農村風景ですが、一歩農民の人たちの立場に立ってみると絶望的な苦しい現実を知らされます。オーガニックコットンの農場では生活改善のプロジェクトが進められ成功してきています。
一般の綿花農場の農民がひとたび有機農業に転換すると、化学肥料はじめとする農薬を仕入れることはなくなります。その代わりに堆肥作りに励みます。楽な作業ではありませんが、借金と言うマイナスのスタートではありません。綿花における有機農業指導員のアドバイスを受けながら害虫対策、除草対策を進め、秋になり収穫します。綿花を一つ一つ手で摘んでゆきます。
オーガニックプロジェクトが、一般の綿花相場の最低でも20%上乗せの支援価格で買い取ります。農民の人たちは、借金していませんのでまるまる収入になります。農薬の害もなく晴れ晴れと元気に収入を得て家族の生活は一変します。家を直し、服を買い、牛を飼って、子供たちに新鮮なミルクを与え、やがて学校に通わせられるようになります。日本人の生活から見たらまだまだ足りているとは言えないかもしれませんが、数年で農業指導員になった人々は希望と誇りに満ちた様子で働いています。オーガニックコットンの認証の基準のなかには、既に農業者の権利を守る項目があり、フェアトレードの取引が基本になっています。
NPO法人日本オーガニックコットン流通機構(NOC)は、インド、アフリカ、ペルーで行われている貧困救済のプロジェクトを支援しています。
その中の一つ、ビオレプロジェクトは、インドとアフリカにおいて1992年からスイスのリーメイ社、スイスコープが中心となって農薬を使う従来の農業からオーガニックコットンの農業への転換を行ない、労働者が貧困から脱する運動を進めてきました。2002年南アフリカ、ヨハネスブルグで開催された世界環境サミットは、このプロジェクトの功績を賛えて表彰しました。2004年には、フェアトレード認証のSA8000も取得しています。
NPO法人日本オーガニックコットン流通機構(NOC)は、この運動を全面的にサポートしています。
*綿花相場の最高値の20%以上で、継続的に買取りを保証する。
*地域の伝統を尊重し、農業者の自主性を引き出す。
*有機農業の訓練所を整備し技術指導を行う。
*井戸や灌漑用水やバイオガス設備などの資金援助を行う。
*医療サービス、学校運営、天災対策など物心両面の支援を行う。出典:NOCホームページより
フェアトレード&オーガニックショップ「福猫屋」